不動産の査定を検討する際、「無料と有料の違いは?」「実際にどのくらいの費用がかかるのか?」といった費用面の疑問は非常に多く寄せられます。とくに初めての売却を検討している方にとっては、不動産会社の査定にどれほどのコストが発生するのかは、行動を決める大きな判断材料になります。
結論からいえば、多くの不動産会社の「机上査定」や「訪問査定」は無料で提供されています。これは、媒介契約を結ぶ前段階の営業行為と位置づけられているためです。ただし、すべてのケースが無料というわけではなく、「不動産鑑定評価書」が必要な場合や一部の地域・特殊物件では有料となることがあります。
以下は、査定方法別・目的別・地域別に分けた現在の査定費用目安を表にまとめたものです。
査定の種類
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費用の目安(税込)
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主な目的
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特徴
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机上査定(簡易査定)
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無料
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相場の把握・初期検討
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所有者情報と物件概要の入力で完了、即日提示が多い
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訪問査定(現地調査あり)
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無料
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売却前提の査定・媒介契約の判断
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担当者が現地確認。写真撮影や室内状況も反映
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不動産鑑定評価書(正式鑑定)
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5万円~20万円程度
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相続・裁判資料・税務処理等の正式書類
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不動産鑑定士が作成する法的効力を持つ文書
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特殊物件の査定(工場・大規模施設等)
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10万円~50万円以上
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企業資産管理・売却準備
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個別対応、鑑定士や複数部署による調査・査定が必要なケースあり
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このように、査定の目的と方法によって費用は大きく変動します。とくに正式な文書を必要とする相続や税務目的の査定では、国家資格を有する「不動産鑑定士」による評価書作成が求められ、一定の費用が発生します。国土交通省が定めた「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づく業務であるため、その分信頼性も高いですが、日数・費用ともに覚悟が必要です。
また、地域によっても多少の差があります。以下は現在の地域別の平均的な鑑定費用の目安です。
地域
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鑑定評価書の費用相場(目安)
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東京23区
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15万円~20万円
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大阪市・名古屋市
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12万円~18万円
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地方都市
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8万円~15万円
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郊外・過疎地域
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5万円~12万円
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こうした費用の違いは、鑑定士の活動拠点、物件の立地条件、調査にかかる手間によって生じています。なお、査定が有料になる場合は、依頼前に明確な見積もり提示が求められます。トラブル回避のためにも、費用の発生条件やキャンセルポリシーについて書面で確認しておくことをおすすめします。
また、「AI査定」や「一括査定サイト」などを利用したサービスでは基本的に無料ですが、あくまで参考価格である点に注意が必要です。本格的な売却戦略を立てる際には、無料であっても複数社の訪問査定を受けることが推奨されます。
査定費用に関するよくある誤解と正しい理解
- 無料査定=手抜きではないが、調査範囲に限界あり
- 有料=絶対に信頼できるとは限らず、目的に応じた使い分けが大切
- 見積もりが有料になるケースもある(再訪問や資料作成などの追加対応含む)
- 査定費用を媒介契約に組み込んでいる業者もあるため、契約前の確認が重要
最終的に大切なのは、査定の目的・物件の状況・売却予定時期を明確にし、それに応じた最適な査定方法を選ぶことです。費用が発生するからといって敬遠するのではなく、「費用に見合う価値があるか」を見極める視点を持つことが、不動産取引において納得の結果を得る第一歩となります。